3-17 早蕨 / 30ml

canoma「EDT 3-17 早蕨」を使用しました。 源氏物語の帖にちなんだ「源氏香之図」をテーマに、日本の美意識とフランスの調香技術を融合させたブランドで、ラベルやパッケージも余計な装飾を排した洗練されたデザインです。源氏物語にちなんだ名前やパッケージにも源氏香之図のモチーフが使われていたりと、コーヒーやワインのテロワール並みにコンセプトがしっかりしていて感動しました。 実際に嗅いでみると奥ゆかしい和のテイストが際立ち、全種類良かったのですが、その中でも早蕨は特別に心惹かれました。脂性肌のため香水は肌にのせた時とテスターで印象が変わりやすいのですが、早蕨はその変化がむしろ良い方向に働き 、ラストノートに向かって和の甘さが自分の肌でより一層引き立ちました。 一度嗅いだら忘れられず、一目惚れして購入。普段使いするには少し高価なので特別な日に使っていますが、つけるたびに高揚感に包まれる大好きな香水です。 …続きをみる

旦那にプレゼントしたらすごく喜んでました。 いい香りが旦那からして最高です！

最近、ふと気付いた事がある。写真で香水の香りは伝わらない。気付くの遅いと咎める前に、少々説明させてください。 昔見ていた料理番組では、料理が完成すると毎度毎度「良い香りでしょう？あっ、そうだった、カメラ越しじゃ分からないか。勿体ない！」というギャグで締めるシェフが居た。 あの番組を観ていた時期から二十年も経ち、商品化こそしていないが、写真を撮る時に空気を舞っている化学物質を解析し記録して、写真を表示した時に似たような香りを再現する技術が生まれたらしい。動物の中で比較的鈍感な嗅覚を持つ人間ですらデジタルな再現には騙されまいと疑心暗鬼ではあるが、ともかく、香りを写真に収める事ができる時代に なったとでも言おう。 香水を嗜む私として、最初にはこれがかなり画期的に思えた。香水を構成する原料達の一覧を読んだだけでは、それらが実際に複雑に絡み合う時の最終的な印象は予想だにできない。己の無知が故と言ったら話が早いが、ひとまず「化学反応の神秘」として片付けるようにしている。 理由が何にせよ、紹介を読んで良さげだと思った香水を嗅いだら微妙だったり、逆に期待しなかった物に心を打たれたりする。一々都会まで足を運ばなくても試嗅できたら、なんてありがたい事だろう。 ここでもう一度、一件関係無さそうな話題に移ります。しょっちゅうアニメを観ていた若造の頃、『モノノ怪』という作品に強い印象を受けた。原色バリバリの和服を着た主人公が、昔の日本で様々な超自然現象と立ち向かう、良い意味での雰囲気アニメ。その一つの回で、主人公と他のキャラクター三人はある遊戯で競い合う。簡単に言えば、誰かが調香した御香を嗅いで、それを構成する複数の香りの中で、どれが複数回登場したかを当てるという遊戯。小さな木の板を立てて、重なった香りを示す。例えば、五通りの香りの中、一つ目と二つ目が同じ、そして三つ目と五つ目が同じで、四つ目だけが被らないのであれば、以下のように板を立てて表す。 粋な事をするなぁ！と思って調べたら、どうも実在する遊びらしく、「源氏香」という。当時はそれを知って終わりだったが、十年後以上経った頃、香水を買いに店に行った際に、棚に並んでいた商品がこの記憶を蘇らせた。「anomaサノマ」という香水の箱を見ると、なんと、あの源氏香の図ではありませんか！ 日本かぶれだと思われても良い覚悟で、店員に嗅がせてくれるよう、興味津々で頼んだ。今思うと、「嗅いでみたい」ではなく「聞いてみたい」と言ったらかっこよかっただろうな、と後悔している。 そこに並んでいたサノマの香水を一通りムエットにかけながら、店員が説明してくれた。フランスの調香技術を用いながら、日本人が、日本人の為に作った香水、だという。マニュアルに書いてあったであろうその売り文句を二回も言った後に、店員の顔色が変わったのを今でも鮮明に覚えている。「こいつ、どう考えても日本人じゃないだろ」という事に気づいただろうね。大丈夫です、店員さん。あの時の私のしかめっ面は怒りや悲しみの表情ではなく、笑いを堪える顔でした。決して傷ついてはいません。 ともかく、ムエットで全て嗅ぐと、特に印象に残ったのが『早蕨』。菓子職人として働いていた頃にはカカオの種類を匂いで当てたりするなど、結構鼻を鍛えてきたつもりである。しかしこの早蕨においては、とにかく混乱した。掴みどころがない。香料を調べると幾分か納得できたが、とにかく厳かでありながら寂しさを感じさせる香り、だとしか認識できなかった。 気になっていたので、店員に手首につけてもらって、ひとまず店を離れた。数分置きに手首を嗅いでは、「うん、良い匂いだ」と満足していた。ところが数十分も経つと、異変に気づいた。 「ん？良い匂いだが、"さっきと違う"良い匂いだ」 更に一時間、二時間も経つと、違う香水ではないかと錯覚するほどに変化していた。冬らしい孤高な雰囲気が、爽やかな春の始まりを連想させる物に変わっていた。まさに、季節の変化によって蕨が育ってくる過程を見せられたようで、良くできた叙述トリックの小説を読んだ時の気分になった。 悔しい。してやられた。たまらない。 この早蕨を買って、今はメインに使っている香水である。嗅ぐ度に「今、何月辺りまで来ただろう？」と興奮して確かめる。 これが、香水が写真では伝わらないと思う理由。匂いを完璧に再現する技術があったとしても、それは写真ではなく、動画に収める必要がある。 by私の旦那より …続きをみる